メルボルン旅行記2025② ~絵画の世界に佇む隠れ家『Lake House』~

2025年2月に5日間旅したオーストラリア「メルボルン」。旅の半分を郊外で滞在し、街だけでは知り得ないメルボルンの魅力に触れてきました。この旅行記通してメルボルンの奥深さを感じていただけると嬉しいです。

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【旅の行程】
1日目:午前 成田発→シンガポール経由→メルボルンへ <機内泊>
2日目:朝メルボルン着、バララット & デイルスフォードへ <デイルスフォード泊>
3日目:デイルスフォード観光(農場&町歩き)<デイルスフォード泊>
4日目:デイルスフォード → ヤラバレーへ <ヤラバレー泊>
5日目:ワイナリー巡り、ヤラバレー → メルボルンへ <メルボルン泊>
6日目:メルボルンの街散策 <メルボルン泊>
7日目:メルボルンの街散策、午後の便で日本へ

今回の旅は、車で約1時間半の場所にある小さな町Daylesford(デイレスフォード)に2泊することから始まりました。なぜメルボルン市内ではなくこの町を選んだかというと、どうしても『Lake House』というホテルに滞在したかったから。ある旅行冊子に載っていた朝もやに包まれる湖畔のホテルに一目惚れし、色々と調べていくうちに、ボタニカルガーデンのような湖畔の風景、芸術作品のようなインテリア、美食家に愛されるレストランなど、このホテルでしか味わえない魅力にどんどんと引き込まれていき、気づけばDaylesfordに2泊することが今回の旅の最大の目的になっていました。

そんなLake Houseでの滞在は、2匹の鳥がとまる扉を開けることから始まります。

ホテルのホームページで、”お部屋から野鳥が戯れる様子が見られることも…” という案内を何度か目にはしていましたが、このホテルにとって鳥の存在があんなにも大きいとは想像もしておらず、この時はただ素敵な装飾の取っ手に見惚れながら建物の中へ入りました。

扉を開けると広がるのは、”エレガントで上質な空間”。
こじんまりとしたレセプションと向かい合う様にライブラリーラウンジあり、その先の階段を降りるとレストランがあるというメイン棟は、どこを見ても上品で個性的なインテリアに溢れていて、言うなれば、オーナーのホテル愛と情熱が込められた個人ギャラリーのような空間。

特にライブラリーラウンジはセンスの塊で、本棚に並べられた色とりどりの蔵書、テイストの異なる置物、デザインの異なるソファ、独創的なライトなど、個性の異なる様々な物が一つの空間に集約されているのに、全く不調和を感じさせない美しさ。

ラウンジの半分近くを占めるガラス窓からは周囲の緑も見えるので、センスの良いインテリアと自然の美しさを同時に味わうこともでき、こんな素敵な空間に身を置くことのできる2日間を想像しただけで心が満たされていくようでした。

レセプションでチェックイン手続きを終えると、スタッフの方と一緒にお部屋へ。
メイン棟から一旦外に出てシダの小道を抜けると、2階建ての客室棟が現れ、私たちのお部屋がある1階へと案内されました。

今回宿泊したお部屋は「Waterfront Suite」。
扉を開けてまず目に飛び込んできたのは、ゆったりとしたリビングルームとガラス越しに見える湖畔の景色でした。壁に掛けられた絵画は、Lake Houseのオーナー夫妻のご主人Allan Wolf-Tasker氏による作品で、Daylesfordの湖が描かれています。この地の美しさを深く知る彼が描く絵画とその先に広がる風景は、言うまでもなく相性が良く、大きな1枚ガラスからこの景色を眺めて欲しいというオーナーの思いが込められているようでした。

リビングの右奥には、植物の葉を幾何学模様の様にあしらったベッドルームがあり、リビングの手前にはエレガントな大理石の洗面台と床暖房完備のバスルーム(洗面台、バスタブ、シャワー、トイレ)があります。
*今回は母娘旅だったので、ベッドはツイン仕様でお願いしました。

目に入る全てのインテリアが個性的で温かみがあり、作り手のこだわりが感じられるものばかり。
それは細部にも散りばめられていて、例えば、部屋の鍵には部屋番号をエレガントにかたどった鉄製の飾りが付いていたり、扉の外に出しておく「Don’t disturb」のサインがアヒルの置物になっていたり、、、全てがLake Houseの世界観を築き上げていました。

ホームページによると、これらは全て、近隣業者から取り寄せた特注家具や地元職人による手作り家具が使われているそうで、Allan Wolf-Tasker氏の絵画もその部屋に合ったものが飾られており、一つとして同じ装飾の部屋はないそうです。だからなのか、メイン棟と同様に部屋に入った時もホテル特有の型にはまった感じが一切せず、オーナーの思いをそのまま表現した邸宅に招かれたようでした。

一際存在感のある大きな1枚ガラスを開けると、サンデッキにはソファと椅子が置かれており、その先には湖へと続く小道が伸びています。”いろんな植物が重なり合う緑のグラデーションの先に湖が広がる” というこのアプローチがとても素敵で私たちのお気に入りでした。

湖からそよ風が吹き込むと周りの木々がシャラシャラと優しい音を奏で、サンデッキに落ちる影もゆらゆらと揺れる、そんな様子を見ているだけでも心が癒されます。小道は湖へと続くだけでなく客室棟の前にも伸びていて、道の両脇には美しく手入れされた小さなボタニカルガーデンが広がっていました。

そんな小道を抜け湖畔に出てみると、目の前に広がるのは、湖と自然とが美しく絡み合う絵画のような風景。

この景色すべてがLake Houseのプライベート空間なんじゃないかと思う程、辺り一帯はいつも静寂に包まれていましたが、湖に架かる小さな橋を渡れば誰もが散策できる湖畔の遊歩道へと繋がり、犬を連れて散歩する人やジョギングを楽しむ人などこの町の日常も垣間見れ、絵画の世界と日常とを行き来しているような不思議な感覚になりました。

客室棟から少し離れたところに見える白い建物は、ライブラリーラウンジやレストランのあったメイン棟。
湖の景観を損なわないようにという思いからか、木と木の間にそっと建てられているので、景色の主役はあくまでも周囲の緑と湖です。

メイン棟の更に奥にある白いとんがり屋根の建物はもう一つの客室棟で、湖に映り込む姿は絵葉書そのもの。
ホテルでありながら美しい景色の一つでもある、それがLake Houseの理念なんだと感じました。

Daylesfordの湖は、雄大に広がる湖とは違い、程よい大きさで周囲の自然も手の届きそうなところにあるので、何だかとても親しみやすく、湖畔を歩いているだけで景色が心に沁みわたっていくようでした。

陽が暮れ始め昼間に吹いていた風がぴたっと止まると、湖は鏡のようになり、どちらが空で湖なのか見分けがつかない程、完璧なリフレクションを見せてくれました。

時間が進むにつれて空の青さが増し、同じように青く染まっていく湖。
Lake Houseに滞在してまだ数時間しか経っていないのに、すでに何種類もの湖の表情に出会い、もうこれ以上の景色はないかなと思っていたのですが、Lake Houseの奥深さはこれだけにとどまらず。。。

翌朝5:30頃に目が覚め湖畔に出てみると、辺りは薄っすら紫色の光に包まれていました。

朝の光は昨晩の夕景とはまた少し違い、どこかノスタルジックさを感じる色彩だったのですが、それよりも明らかに異なる点がもう一つ、それは湖畔に集まるカルガモたちの姿でした。

昨日は午後から夕方にかけて1羽も岸に上がっていなかったのに、今朝は一箇所に10羽以上が集まり、鳴き声すらあげずに、ただひたすらに芝生をつつきながら何かを食べているのです。私が少し動いたところで彼らは微動だにせず、その姿を見て、こんなにも近くに彼らの日常があるんだと驚きました。

一度部屋に戻り朝の支度をしていると、今度は外から大勢の人の笑い声のようなものが聞こえてきて、、、
「何ごと!?」っと再び湖畔に出てみると、白い鳥の大群が湖の上を勢いよく飛び交っていました。

百羽近い大群が空高く飛んでいたかと思うと、木々の高さまで下りてきて、低空飛行で左右を行ったり来たり。一羽として隊列を乱すことがなく、まるで湖の上を白い帯が縦横無尽に形を変えて動いているようでした。

真上で白い鳥たちによるスペクタクルショーが繰り広げられていても、全く動じることなく自分達のペースでもくもくと朝ごはんを食べているカルガモたち。足元と頭上とでは全く異なる鳥の日常が繰り広げられていて、こんな野鳥たちの世界を惜しげもなく見せてくれるLake Houseの環境に、ただただ感服するばかりでした。

激しく動き回っていた鳥たちにも休憩が必要だったのか、メイン棟の隣りにある大きな木で一休み。

休憩中は鳴き声を発しないことも不思議でしたが、一羽の鳥が羽ばたくと、一斉に皆が飛び立ち、空に大きな帯を作って東の方へと飛び去っていく姿も圧巻で、野鳥の世界を垣間見れた朝の時間は私たちにとって忘れられない体験になりました。

8時過ぎ、朝食を食べにメイン棟にあるレストランへ。
昨晩は、深夜飛行による疲れと眠気でレストランで夕食を食べる元気がなかったので、2日目の朝食が私たちにとって初めてレストランに足を踏み入れる機会になりました。

レセプションから伸びる階段を降りると、徐々に見えてくる優雅で気品溢れる空間。

案内されたテーブルは、窓から見える緑があまりにも美しく、花を咲かせたようなライトと植物柄の深い緑のクッションが外の景色と絶妙にマッチし合い、一目見てこの雰囲気に魅了されてしまいました。

椅子に座って見渡すレストランもエレガントさに溢れ、私たちも自然と背筋が伸びます。
各テーブルには角砂糖や塩の入った小さなガラスの小鉢が置かれていて、よく目にする白い壺ではないんだぁと、センスの良さがこんなところからも感じられる素敵なセッティング。

Lake Houseでの朝食は、パンやペストリー、ヨーグルトなどは長テーブルに置かれたビュッフェから選び、温かい料理はアラカルトメニューから選ぶスタイル。

テーブルに並べられたビュッフェの色鮮やかさやディスプレイの美しさは、まるで宝石が並べられているかのようにお洒落で見栄えが良く、大きな花瓶に生けられた生花、壁に掛けられた絵画、様々な場所に配されたインテリア、全てがゴージャスで且つ色彩豊か。でもごちゃごちゃとした印象を全く受けず、この空間にいるだけで心が花束で埋め尽くされるような多幸感を感じました。

ビュッフェから取ってきたものを置くと、テーブルにもぱっと花が咲いたようで、アラカルト料理が運ばれてくると更に豪華さが増し、まずは視覚から優雅さを味わいました。そして、料理一つ一つも食材本来の味が引き立たされ、この日のディナーへの期待に繋がる繊細な味わいでした。

朝食後、再び湖畔に出てみると、空はすっかり青くなり、カルガモたちは場所を変えて引き続き食事中。
どうしてこのコたちは人を全く気にせず、こんなにも自由奔放に生活しているんだろう。。。

小さな橋を渡り湖畔沿いを散策していると、メイン棟の前に広がる湖には、色の違うカルガモたちが優雅に泳いでいました。湖面は太陽の光でキラキラと輝き、鏡のようなリフレクションとはまたひと味違う美しさ。

湖畔に立つ木には白い羽が付いていて、早朝に白い鳥の群れが飛んでいた時にたまたま羽根が落ちて木に刺さったのか、散歩中の誰かが落ちていた羽根を拾って刺したのかはわかりませんが、朝の余韻がこんなところにも残っているんだと感じたり、カルガモよりも大きな鳥が水面ぎりぎりを羽ばたいていったり、、、

ふと水辺に目をやると、2羽のカルガモが仲良く浮かんでいるのが見え、
 ”これに似た姿、どこかで見たことがある。。。”
 ”そうだ、Lake Houseに初めて入る時に目にしたメイン棟の手すりの装飾にとても似ている!”

まるで野鳥の住処にホテルが建っているのかと思う程、鳥とLake Houseとのゆかりはとても深く、このホテルにとって鳥は象徴的な存在なんだと腑に落ちました。

『Lake House』とは・・・
湖には絵画のような景色が広がり、日々の空模様や光の具合で湖の表情は刻々と変化し、Daylesfordの住人たちや野鳥たちの日常も間近で感じられ、Lake House全体で造り上げられた芸術的な美しさも味わえる。

メルボルンの郊外で、こんなにも素晴らしい世界を体験できるとは想像もしておらず、Lake Houseでの滞在は私たちにとって間違いなく人生を豊かにする思い出の1ページになりました。

そして、、、DaylesfordとLake Houseの魅力は更に続くのです。。

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