2024年3月に6日間旅したオーストラリア、シドニー。1都市だけの滞在でしたが、多くの魅力を感じ、想像以上に刺激を受ける旅になりました。旅行記を通してシドニーの奥深い魅力を感じていただけると嬉しいです。
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【旅の行程】
1日目:朝シドニー着、街の散策 <シドニー泊>
2日目:シドニー→ブルーマウンテンズへ <ブルーマウンテンズ泊>
3日目:ブルーマウンテンズ観光 <ブルーマウンテンズ泊>
4日目:ブルーマウンテンズ→ハンターバレーへ <ハンターバレー泊>
5日目:ハンターバレー→シドニーへ <シドニー泊>
6日目:街の散策 <シドニー泊> ☚今はココ
7日目:午後の便で日本へ
シドニーは公共交通機関の宝庫で、電車・バス・トラム(ライトレール)・フェリーと移動手段が充実しており、「Opalカード」というICカード(日本のSuica / Pasmoのようなもの)でそれら全てを利用することができます。また、タッチ決済可能なクレジットカード(VISA / Master / Amex)があれば、改札や読み取り機にカードをタッチするだけで運賃が自動決済されるので、Opalカードがなくても、すぐに利用可能という観光客にも優しいシステムが確立されています。

その充実した交通網のおかげで、私たちもシドニー空港到着後、すぐに電車でシドニー市内へ移動、観光中も気軽に公共交通機関を利用できました。
ちなみに、私はシドニー空港にある鉄道駅の改札手前でOpalカードを購入、滞在中チャージした料金が足りなくなった場合は、鉄道駅やフェリー乗り場にある専用機でTop Up(=日本でいうチャージ)していました。

旅の6日目はシドニーで丸1日観光ができる日。
できれば徒歩圏内ではなく少し遠出をしたいと思い、“何に乗ってどこに行くか“ を考えた時に、すぐに頭に浮かんだのが、「シドニーらしい乗り物=フェリーに乗って、まだ見ぬシドニーを探検したい!」でした。
早速、シドニーの公共交通機関の詳細が載っているTransportnswのホームページで、下記のフェリールートマップをダウンロードし、どこに行けるか、どこに行きたいかを検討します。

オペラハウスのすぐ横に位置する港 Circular Quay(サーキュラーキー) から出ているルートは9つ、その中で私が一番気になったルートは『F9:Watosons Bay』でした。
調べると、「ワトソンズベイ」はシティ(シドニー中心地) よりも静かな雰囲気が広がり風光明媚な景色も味わえる。途中で立ち寄れる「ローズベイ」には小さなビーチだけでなく、個性的な小径(?) もあり興味津々。
ということで、F9のルートでフェリー旅に出てみることにしました。
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旅行前にTransportnswのホームページでフェリーの時刻表をチェックすると、平日(月~金)のワトソンズベイ行きの始発は9:45発。念のため、6日目の朝は少し早めにサーキュラーキーへ行き、各フェリーの出発時間と乗り場が表示された電光掲示板をチェックすると、ワトソンズベイ行きは「9:45発・Wharf 2 (2番埠頭)」とあったので時刻表通りで一安心。Opalカードを改札にかざし、2番埠頭に入場しました。

この日は少し雲は多いものの、風はほとんどなく快適な気候だったので、外のデッキにある椅子からシドニー湾の景色を楽しむことにしました。
フェリーは時間通り出発。シドニー中心部は、歴史を感じさせるビルと近未来を感じさせるビルとが入り混じっているので、離れてみると、時代の統一性がなく色味も様々。

シドニーのビル群が小さくなる一方で、存在感を増していくのが進行方向右手にあるオペラハウス。もっと白が際立つ建物かと思いきや、見る方向を変えると意外にも茶色の占める割合が多く、その色の組み合わせがより重厚感を増し、街の象徴としての風格すら感じました。

オペラハウスの周囲を回り終えると、フェリーは東に向けて直進し、いつの間にかビル群とオペラハウスとが一直線に並ぶパノラマの景色へ。シドニーの街を歩くと、公園以外の場所でもビルのすぐ横に大樹があり、都市と自然の共存風景に日々驚かされていたので、森の中にビルが生えているかのように見えるこの景色は、シドニーの街そのものを表現しているかのようでした。

中心部から離れていくと周囲の景色は一変、木々の間から色とりどりの高級マンションや高級住宅が顔を覗かせ、優雅な海岸線が流れていきます。

フェリーは途中、ローズベイに立ち寄りましたが、降りるのはワトソンズベイからの帰りに予定しているので、私たちはそのままフェリーに乗ったまま。終点であるワトソンズベイが近づくにつれて、周囲の景色は更にのどかさを増していきました。

フェリーがワトソンズベイの桟橋に接岸されると、まず目に飛び込んできたのは、大きな木と緑の公園。
ワトソンズベイも観光客に人気のエリアなはずなのに、観光地特有の賑やかさはなく、シドニーから約25分で辿り着いたとは思えない程、のどかで静かな空気に包まれていました。

桟橋付近には、老舗シーフードレストランの「Doyles on the beach」やホテルが数軒あるだけで、その先は家と緑の連続。活気に満ちた華やかな町よりも、素朴さの残る小さな町の方が好きな私にはぴったりの雰囲気で、まだ見ぬワトソンズベイへの期待が一気に高まります。

桟橋の付け根部分にあるワトソンズベイの地図を見て、まずは行きたい場所の確認を。
ピンク色の★が今いる場所で、青色の★が行く予定の場所。まずは地図の左部分にある3つの★を目指します。
(★印はブログ用に私が付けました)

海沿いの湾曲した道を歩いていくと小さな上り階段があり、そこを上がって町の中へ。階段からフェリーが到着した海を振り返ると、白い小舟が幾つも停泊し、小さな港町の風景に心が和みます。

一旦海から離れ、町の中の通りを歩いてみると、道の両側から緑が覆い茂り、所々ピンクの花やヤシの木も点在していて、海がすぐ近くにある町ならではの南国情緒があります。人や車の往来はほとんどなく、地元住人の日常を垣間見ているようなこの通りは、街の喧騒とは無縁の心地良さがありました。

真っ直ぐ伸びる通りを歩ききると、1つ目の★印である「Camp Cove Beach(キャンプコーブ・ビーチ)」の入り口に辿り着きました。
緩やかなカーブを描くビーチの周りには、ほどよい数のヤシの木やパインツリー、美しい家が立ち並び、絵本から飛び出してきたのかと思わせる程の愛らしいビーチで、

陽の光があたると翡翠色にも黄金色にも輝く海の色は格別の美しさでした。

ビーチの入り口には「Camp Cove Kiosk」という小さなお店があり、ドリンクだけでなく、サラダやトースト、サンドイッチといった軽食も売られています。お店の横には飲食用のスペースとしてちょっとしたオープンテラスがあり、日本でいう”キオスク” とは明らかに違うお洒落さがありました。


そんな愛らしいCamp Cove Beachを通り過ぎると、ここからは少し上りのウォーキングトレイルが始まります。
トレイルの始まりに突如現れる千手観音のような木。今回の旅では、今にも動き出しそうな木を沢山見てきましたが、日本ではなかなか出会えないこのフォルムには毎回圧倒され、つい立ち止まってしまいます。

更に上っていくと、木々の切れ間から少しずつ景色が見下ろせるようになり、さっき通り過ぎたCamp Cove Beachの全景を見渡せる場所に辿り着きました。ここから見ても波は穏やかで、鏡のような海は本当に美しい。

そして更に進むと、2つ目の★印「Lady Bay Beach」に到着。
ビーチへと続く階段を降りていくと、崖と崖の間にひっそりと広がる小さなビーチが現れ、その地形を生かしてからか、ここはヌーディストビーチとしても知られる場所。透明度の高いエメラルドグリーンの海は、Camp Cove とは異なる美しさがあったので、誰も泳いでいないことを確認し、そっと写真に収めました。

その後もウォーキングトレイルは続き、ワトソンズベイの北端にある灯台を目指します。

木々の茂みを抜けると景色は一気に開けて、シドニー湾と遠く先に浮かび上がるシドニーのビル群が一望できる見晴らしの良い場所に辿り着きました。Camp Cove Beach程の鏡のような海ではないけれど、水面に薄っすらと波模様だけが残る穏やかな海には違いありませんでした。

そしてできれば、最後にホーンビー灯台の姿を見てこのウォーキングトレイルを終えたかったのですが、私が訪れた2024年3月時点では灯台は改装工事中のため見られず。現在は工事が終了しているので、赤と白のストライプ柄の灯台がトレイルの最後を締めくくっています。
ワトソンズベイ北側部分の散策が終わったので、次の目的地は東側にある「The Gap」。
歩いてきたウォーキングトレイルを戻り、フェリーの船着き場の正面にあるロバートソン公園を横切ると、The Gapの入り口に到着します。海岸線沿いに造られた遊歩道からは、クリスマスツリーのような形のノーフォーク松・教会・家が点在する愛らしいワトソンズベイの町が眼下に見下ろせ、

更に上ると、白い小舟が浮かぶワトソンズベイの湾や、シドニーのビル群まで見渡せる場所に辿り着きます。
ワトソンズベイ周辺は緑が本当に豊かで、海や空の青色とのコントラストが絶妙に美しいです。

そんな高台から東側の景色へ目を移すと、垂直に切り立った断崖絶壁の海岸線が現れ、さっきまで目にしていた鏡のような海からは想像もつかない程、大迫力の南太平洋が広がっていました。
この景色が眺められる場所を何故「The Gap」と名付けられたのかはわかりませんが、ワトソンズベイの大地を挟んで「静と動」両極端の海が見られるそのギャップの大きさに、この名が付けられたのでは。。。と想像が膨らみます。

The Gapの遊歩道を更に南下すればオーストラリア最古のマッコリー灯台にも行けるのですが、ワトソンズベイの後にローズベイにも立ち寄りたかったので、今回は訪れず。フェリーの時間まで、船着き場付近に広がるRobertson Parkで少し休憩することにしました。
この公園の素敵なところは、美しいフォルムの木がいくつもあり、その先に小舟が停泊する湾やシドニーの街が見渡せるフォトジェニックさにあります。海の近くには人の数ほど海鳥がいて、食べ物を狙われるという危険性はあるものの、その姿は確実に港町の美しさを引き立たせてくれていました。



公園のすぐ横にはWatsons Bay Boutique HotelのBeach Clubがあり、ちょうど喉も渇いていたので、フェリーの待ち時間を利用してビールを飲むことに。ストライプ模様のパラソルの下、海を眺めながらオーストラリアビールを喉に流し込む至福の時間。私たちがお店に入った頃は随分と空席が目立っていましたが、数10分後にはかなりの賑わいになり、シーフード、バーガー、ピザなどの料理がテーブルを埋め尽くしていました。

そろそろフェリーがやってくる時間になったので、船着き場に向かいます。
フォルムの美しい木から臨むワトソンズベイの湾とシドニーのビル群。この景色ともお別れです。

サーキュラーキーからやって来たフェリーから乗客が降りると、ワトソンズベイを後にする私たちが乗船し、同じフェリーが来た道を引き返すようにローズベイへと出発。ローズベイが近づいてくると、次第に海岸沿いの景色に住宅が増え始め、のどかさから華やかな雰囲気へと変わっていきます。

またローズベイにあるRose Bay Beachは遠浅の海が特徴で、船着き場が近づくにつれて、心なしか海の色も遠浅を感じさせる薄いブルーに変わってきているような気がしました。

ワトソンズベイからローズベイへはフェリーで10分、まずは Rose Bay Beach を目指します。船着き場を背に左に伸びる海岸線沿いの道を進むと、徐々に見えてきた緩やかなカーブの遠浅ビーチ。ここはドッグフレンドリーなビーチでもあるので、砂の上を楽しそうに散歩する犬たちの姿も見えます。そう言えば、ワトソンズベイのビーチでは犬が波打ち際を走る姿を見ていない気がする。。。

一旦このビーチは通り過ぎ、ローズベイで一番行きたかった小さな路地を目指します。その路地は、Rose Bay Beachのすぐ近くにあり、もとは誰も気に留めなかった代わり映えのしない路地を、NSW州政府によるプロジェクトの一環で、アーティストの手により記憶に残る路地に生まれ変わらせという場所。
まず始めに訪れたのは「Percival Laneway」。シドニーのアーティストSharon Billingeさんが手掛けたこの路地は、ドッグフレンドリーなRose Bay Beachとそこに生息する植物をイメージして描かれたそうです。


次に訪れたのは、そのすぐ近くにある「Collins Lane」。
一目見ただけで、ぱぁっとカラフルな花が咲いたようなこの路地は、シドニーのアーティストAlice McAuliffeさんによって手掛けられ、カラフルなイタリアの小さな町をイメージして造られたそうです。

建物の壁の色が色彩豊かなのはもちろんのこと、両脇には溢れんばかりの植物が置かれ、頭上にはライトが吊るされ、何より印象的だったのが花柄のレースを敷き詰めたようなコンクリートカーペット。そして、路地の入り口から見た景色と、路地を歩き切って振り返った時の景色とで、微妙に受ける印象が異なるのもこの路地の面白さでした。


たった2本の小さな路地ではあるけれど、ストリートアート文化が開花しているオーストラリアのセンスの良さを感じるには、有名過ぎず観光客もそれほど多くない穴場的スポットなので、ワトソンズベイの帰りに、Rose Bay Beachとセットで訪れるのもシドニーの別の顔が感じられて面白いと思います。

ちなみに、平日(月~金)のワトソンズベイ→ローズベイ→サーキュラーキーへのフェリーの最終便は16時台とかなり早いですが、ワトソンズベイからではなく、ローズベイ→サーキュラーキーへのフェリーの最終便は23~24時頃まであります。Rose Bay Beachは美しい夕日スポットとしても有名なので、黄金色に染まるビーチを見てから、サーキュラーキーに戻るというのも良いと思います。
※週末(土・日)は、ワトソンズベイ発の最終日は23~24時頃まであります。(2024年3月時点)

この日、サーキュラーキーに戻って来たのは15:30頃。朝9:45発に出発したので、約6時間のフェリー旅でした。今回私が訪れたワトソンズベイやロースベイへ向かうルートは、海岸沿いの町並みが本当に美しく、シドニーから30分程で全く雰囲気や景色の異なる町を味わえるので、是非フェリー旅もシドニー観光の一つに入れてみて下さい。
