
2025年2月に5日間旅したオーストラリア、メルボルン。旅の2/3をメルボルン郊外に滞在し、メルボルンの知られざる顔に触れてきました。この旅行記通してメルボルンの奥深い魅力を感じていただけると嬉しいです。
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【旅の行程】
1日目:午前 成田発→シンガポール経由→メルボルンへ <機内泊>
2日目:朝メルボルン着、バララット & デイルスフォードへ <デイルスフォード泊>
3日目:デイルスフォード観光(農場&町歩き)<デイルスフォード泊>
4日目:デイルスフォード → ヤラバレーへ <ヤラバレー泊>
5日目:ワイナリー巡り、ヤラバレー → メルボルンへ <メルボルン泊>
6日目:メルボルンの街散策 <メルボルン泊>
7日目:メルボルンの街散策、午後の便で日本へ
今回利用した飛行機は、直行便ではなく、途中乗り継ぎのあるシンガポール航空でした。
*SQ637便:成田 → シンガポール(10:00-16:40 / 所要時間 7時間40分)
*SQ247便:シンガポール → メルボルン(19:20-05:40+1 / 所要時間 7時間20分)
乗り継ぎなしの10時間超のフライトよりも、7時間のフライトで1回地上に降りて休憩できるスケジュールの方が気が楽という母の要望と、比較的安い運賃のビジネスクラスにも空きがあったというこの2点から、迷うことなくシンガポール航空を選びました。
事前に何十種類ものメニューから好みの機内食を選べる『Book the Cook』を利用し、「天ぷらうどん」と「鮭茶漬け」を選択。もっと豪華なメニューもありますが、機内食が苦手な私たちにとっては、これくらい軽めのもので十分。乗り継ぎのシンガポール→メルボルンは夜間飛行なので、機内食はほぼ食べず、早々に座席をベッドメイクしてもらい、旅の始まりに備えて寝ることだけに注力しました。


メルボルンには、定刻通り早朝の5:40に到着。
オーストラリアの主要空港の入国審査はスマート化されており、メルボルンではキオスクと呼ばれる読み取り機にパスポートを挿入させ、画面タッチで必要事項に応えるとチケットが発券されます。次に自動化ゲートに進みモニターで顔認証後、発券されたチケットを機械に挿入させると入国完了です。税関申告の列に並んでいる間に、ポケットWifiを起動させスマホにリンクさせると、WhatsApp(海外でよく使われているメッセージアプリ)に数件のメッセージが入っていました。
この日は、メルボルンの空港から郊外のBallarat(バララット)とDaylesford(デイレスフォード)に行くという行程。スーツケースを持ちながら公共交通機関を駆使してこの行程をこなすのは現実的ではないので、事前に専用車を手配していたのです。メッセージ(英語)はそのドライバーからのもので、
> ドライバー:「もうすぐ空港に着くよ、君たちは今どこだい?」
> 私:「今、税関待ちで恐らく15分はかかると思います」
> ドライバー:「OK!じゃー、空港出口のカフェの前で待ってるね」
これで、ドライバーとのミスミートはないので一安心。全てをスマホに頼るのは好きではないのですが、見知らぬ人と待ち合わせするには本当に便利で、到着後のあらゆる緊張から解き放たれた瞬間でした。

空港を出ると、2月=夏のメルボルンを想像していたのに気温は14℃。いくら朝7時頃とは言え、冬の日本とそれほど変わらない寒さに驚愕。ドライバーも「今日は、特に寒いんだよ」と。”メルボルンの1日には四季がある” とは聞いていましたが、まさか到着早々冬を感じるとは想像もしていませんでした。
日本から着てきたハーフコートを羽織ったまま車に乗り込み、天候に不安を抱えながらも郊外のDaylesfordに向けて出発。移り行く車窓の風景を眺めていると、急に車が減速し「右を見て」というドライバーの合図と共に現れたのは道のすぐ横を逆走するカンガルー。その後も、白い鳥の群れが一斉に羽ばたいていったり、一面の牧草地に囲まれたりと、大自然の映像フィルムの中を走り抜けているようでした。

1時間半程走ると少しずつ町並みが増えてきて、最初の目的地である小さなカフェに到着しました。
そのカフェの名は『Cliffy’s Emporium』。歴史は1950年代まで遡り、並外れた品揃えの雑貨店だった当時の建物と趣きをそのままに受け継ぎ、現在は特産品やキッチン雑貨を扱う傍ら、美味しいコーヒーとこの地域の食材で作られた料理を提供するカフェとして生まれ変わった地元民に愛される憩いの場。

今日から2泊するホテル『Lake House』がある町Daylesfordで素敵なお店を探している時にこのカフェに出会い、旅の始まりはこのカフェでの朝食にしたいと思ったのです。入り口のガラス窓には、古くから家庭で愛されるオーストラリアのコーヒーブランドBushellsの看板がいくつも掲げられ、趣きある木製の扉をそっと開くと、

目に飛び込んできたのは、1950年代にタイムスリップしたかのようなレトロな空間。昔ながらの木造りの棚には所狭しとコーヒー缶やジャム、その地の特産品が並べられ、温かい色味の間接照明と地元の人たちの和やかな話し声が、旅の始まり特有の心の緊張を優しく解きほぐしてくれるようでした。



柔らかな笑顔の店員さんに8:30に予約を入れていることを伝え、隣りのカフェスペースに案内されると、こじんまりとした空間にはすでに10人程の地元の方が朝食を囲み談笑中。メルボルン郊外では、できるだけ地元の人達が集う場所に行ってみたかったので、想像以上の賑わいに胸が高鳴りました。
メルボルン最初の朝食に選んだメニューは、「Sourdough with Fried egg」と「Brunch Plate」。
Sourdough(=サワードゥ・ブレッド)とは、ブラウン色の生地で少し酸味があり、栄養価が高いことでも知られるオーストラリアの朝食ではお馴染みのパン。卵は新鮮さが一目でわかるくらい艶やかで、野菜も本来の味が十分生かされており、どれもが口に入れた瞬間に体が喜ぶ美味しさでした。
美しいラテアートが描かれた「カフェラテ(ガラスのカップ)」と「カプチーノ(陶器のカップ)」も、カフェ文化の中心地メルボルンで味わう記念すべき最初の一杯にふさわしいコク深さでした。



暫くするとお客さんの数も少なくなり、カフェスペースに一時的な静寂が戻ってきました。この日は異例の寒さだったので、カフェの奥には暖炉の火が灯されており、何となく冬を感じさせる雰囲気が広がっていました。
”メルボルンに滞在している間に夏を感じる日はやって来るのかな。。。”
そんなことを思いながら、次なる目的地 Ballarat(Daylesfordから約45km)に向けて出発。
*Ballarat(バララット)とは…
オーストラリアの先住民アボリジニ-の言葉「バラ(休憩地)」「ラット(野営地)」が起源で、元々は共同遊牧場だった場所が、金の採掘:ゴールドラッシュで繁栄し1860年代に最盛期を迎えた街。
その当時の建物が今もなお残るとのことなので、オーストラリアの古都を味わうべく訪れることにしたのです。
街歩きの最初はBallarat駅から。メルボルンから電車で行けば、約1時間半で到着するBallaratの玄関口。
ゴールドラッシュ時代、人々の往来だけでなく物流にも大きく貢献し、Ballaratの街を繁栄させてきた歴史深い駅舎に足を踏み入れてみると、当時の様子を思い起こさせるレトロ建築で埋め尽くされていました。

モザイク柄の床の先にあるガラス扉を開けプラットホームに出てみると、まず始めに目に飛び込んできたのが茶色の鉄の歩道橋。駅の屋根の中に歩道橋があるというのも不思議な感じがしましたが、1877年に取り付けられたその歴史的建造物の驚くべきポイントは、

歩道橋の手すりと床の部分が木造であるということ。外から見ると鉄製なのに、実際渡ってみるとギュッギュッっと木のきしむ音がして、昔の木造校舎を思い出しました。

ホームには「電車とホームの間の隙間にご注意下さい」という意味の ”MIND THE GAP” の文字が刻まれており、イギリス(特にロンドンの地下鉄)でよく目にするこのフレーズに、オーストラリアはかつてイギリスの植民地で歴史的に深い繋がりがあったことを感じさせます。そして、一見するとそれが駅だとは思わない堂々たる佇まいの白亜の外観は、ゴールドラッシュ時代の栄光を象徴しているかのようでした。


駅前に伸びるLydiard Street(リディアード通り)には、ゴールドラッシュ時代の面影が色濃く残り、歴史的建造物が数多く立ち並んでいます。線路の横にある個性的な建物『Provincial Hotel』は1909年に建てられ、数多くのパブやホテル経営者の住居として利用される度に荘厳さを増し、現在の姿に辿り着いたそう。もし今回2泊した『Lake House』に出会っていなければ、このホテルでの宿泊を候補の一つに入れていたと思います。


Lydiard Streetの街並みは、ヨーロッパの旧市街とも違い、アメリカの西部開拓時代の古き良き町とも異なる独特の趣きがあります。特に目に留まったのが「OLD COLONISTS HALL」「MINING EXCHANGE」と刻まれた2つの建物で、アーケードやベランダの支柱に施されたレースのような装飾と建物全体の色合いとの調和具合に美しさを感じずにはいられませんでした。

そんな歴史的な街並みが通り沿いに立ち並ぶ一方で、細い路地に足を踏み入れると現代的なストリートアートが突如として現れるのがバララットの面白さ。Armstrong Street(アームストロング通り)の中程にある細い路地にはカラフルな傘がびっしりと吊るされており、ひっそりとしたフォトスポットになっています。

その路地の魅力は頭上だけにとどまらず、目線を壁に向けると独創性溢れるストリートアートが一面に描かれており、更に奥に進めばCDジャケットのようなポップな壁も現れて、見る人を惹きつける「現代アートの回廊」のような場所でした。



街の中心から少し離れると雰囲気はガラッと変わり、閑静な住宅街が広がるWebster Street(ウェブスター通り)には枝ぶりの良い木々が覆い茂り、緑のトンネルが遠く先まで続いています。両脇には装飾の美しい邸宅が立ち並び、広い庭にはソファを置いている家もあり、天気の良い日にはそこで近所の人と語らうのが休日の楽しみ方なのかな。。。と想像が膨らみます。


そんな閑静な雰囲気に魅了されつつも、この通りを歩いてみたかった一番の目的は地元の人が足を運びそうな小さなカフェ。Ballaratの街歩きを計画するにあたり、主要な通りにあるカフェではなく、隠れ家的なカフェがないかと探していた時に、このカフェのウォールアートに目が留まりました。

カフェの名は『Webster’s Market and Cafe』。
レンガ造りの壁面には、女性の横顔が描かれていて、風になびく髪をよく見ると ”雲” と ”鳥” が描かれており、更に目を凝らすと、カフェの住所の郵便番号である ”3350” の数字が浮かび上がってきます。

ガラス張りの店内からはWebster通りの緑が見え、オレンジとブラックの椅子がポップな印象を与える明るい雰囲気のカフェ。朝食を食べてからまだ時間が経っておらずそれ程お腹も空いていなかったので、軽めにオレンジマフインとクランベリーマフィンを注文。ドリンクは、オーストラリア発祥のカフェメニューである「ロングブラック」と「フラットホワイト」にしてみました。
*ロングブラック(Long Black)=シングルショットのエスプレッソとお湯を混ぜたコーヒー
先にお湯をカップに入れてからエスプレッソを注ぐので、飲み始めはエスプレッソの味が強く、飲み進めていくうちにお湯と混ざり合い、スッキリとした味わいになるブラックコーヒー。
*フラットホワイト(Flat White)=エスプレッソと泡立てたミルクを混ぜたコーヒー
ラテよりもミルクの量が少ないため、エスプレッソの風味がより際立ったミルクコーヒー。


カフェに入った時は朝食のサービスが終了した11時頃で、人の姿もまばらでしたが、お昼が近づくにつれてどんどんと地元の人たちが集まってきていつの間にか賑やかな空間に。そんな何気ないBallaratの日常の中に身を置けることがとにかく楽しく、地元民になりきってカフェ時間を楽しみました。
カフェを後にし、更にWebster通りを進んで行くと一気に視界が開け、1956年開催のメルボルンオリンピックでボート競技が行われたというLake Wendouree(ウェンドゥリー湖)に辿り着きました。

湖には野鳥が水辺を泳いでいたり、一際目を引くブラックスワンが湖畔を歩いていたり。。。自然豊かに見えるこの湖も、ブログを書く上で色々と調べていると、2006~7年に干ばつに見舞われ湖の水が消えてしまったこともあるのだとか。。。でも遊歩道を歩いている時はその歴史を知ることもなく、湖畔に点在するクラシックなボートハウスが湖に映り込む姿にただただ見惚れていました。


ここでBallaratの散策は終了。WhatsAppでドライバーに湖畔にいることを伝え迎えに来てもらい、いよいよ旅のハイライトの一つである『Lake House』ホテルへと向かいます。
Lake Houseホテルは朝食を食べた町Daylesfordにあるので、来た道を引き返す形になりますが、メルボルンに到着してまだ数時間しか経っていない私たちにとっては車窓から眺める雄大な牧草地は何度見ても飽きることがなく、気づけばホテルのあるDaylesfordに到着していました。
こじんまりとした町の中心から湖までは車でほんの数分の距離。木の茂みにさりげなく建つ「LAKE HOUSE」の看板を目印に敷地内に入ると、木々の間から白い邸宅が見えました。
” 情報が少なく自分の感性だけで選んだこのホテル、果たして想像通りの滞在ができるだろうか。。。”
でも、その心配は白い邸宅の中に足を踏み入れた瞬間に消えてなくなりました。

小さな湖と木々とか混在し合う景色。湖にはいくつか小さな橋が架かり、Lake Houseの周りには美しい植物も植えられ、そこはまるで自然の姿とボタニカルガーデンとが融合し合う絵葉書のような世界。

湖沿いにはホテルの宿泊者だけでなく誰もが散策できる遊歩道があり、犬を散歩させている人やジョギングを楽しむ人の姿も。そして、水面や湖畔にはカルガモたちが人のことを全く気にすることなく優雅に戯れていて、Daylesfordの日常を感じながら美しい景色に身を委ねられる小さな楽園が広がっていました。


この『Lake House』で味わった夢のような時間は次のブログでお話しします。
