メルボルン旅行記2025④ ~絵葉書のような景色の連続 in Daylesford & Yarra Valley~

2025年2月に5日間旅したオーストラリア「メルボルン」。旅の半分を郊外に滞在し、街だけでは知り得ないメルボルンの魅力に触れてきました。この旅行記通してメルボルンの奥深さを感じていただけると嬉しいです。

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【旅の行程】
1日目:午前 成田発→シンガポール経由→メルボルンへ <機内泊>
2日目:朝メルボルン着、バララット & デイルスフォードへ <デイルスフォード泊>
3日目:デイルスフォード観光(農場&町歩き)<デイルスフォード泊>
4日目:デイルスフォード → ヤラバレーへ <ヤラバレー泊>
5日目:ワイナリー巡り、ヤラバレー → メルボルンへ <メルボルン泊>
6日目:メルボルンの街散策 <メルボルン泊>
7日目:メルボルンの街散策、午後の便で日本へ

メルボルンから車で1時間半程のDaylesfordにある隠れ家ホテル『Lake House』で迎える2日目の朝。
日の出前の6時過ぎに湖畔に出てみると、薄い雲が赤く染まり、湖には全く同じ空模様が映っていて、まるで絵画の世界に迷い込んだのかと錯覚してしまいそうなほど美しい朝の風景が私たちを迎えてくれました。
湖畔の草地には今日もカモ達が集まっていて、一心不乱に食事中。

湖が鏡と化す早朝の静寂があまりにも心地よく、暫くの間、空と湖面の景色だけに見惚れるという贅沢な時間。こんな極上の景色を、私と母とカモ達だけで独占していいのだろうか。。。まだ眠りについている他のゲストにも教えてあげたくなります。

赤や黄金色に染まる朝のトワイライトが終わると、辺りは次第に明るくなり、紫色のアガパンサスの花と青い湖面が調和し合う柔らかな景色へと変わっていきました。色彩が刻々と変化する幻想的な朝を味わえるのは、早起きした者だけの特権なのです。

Lake Houseで迎えた1日目の朝は、白い鳥の群れが大きな鳴き声と共に湖の上を縦横無尽に飛び回る大迫力の動きに圧倒されましたが、2日目はカモ達が時折立てる小さな音だけが響き渡る凛とした静けさに包み込まれ、この2日間は別の場所で目覚めたのでは、、、と思うほど全く違う朝を経験しました。

1日目の朝、白い鳥の大群が見せたスペクタクルショー

時間が経つにつれて空はすっかり青さを取り戻し、湖面には元の色を忘れてしまうほど空と木々が完璧に映り込み、目に入る景色のほとんどが青と緑の色彩だけで埋め尽くされていきました。

風のないこの日、鏡のような湖面に唯一変化を与えていたのが、滑るように泳ぐカモ達でした。
彼らが泳ぐとそこから波紋が広がり、映り込む景色にその揺れが均等に伝わって、完璧だったリフレクションが印象派の絵画のように滲んでいく、彼らにとっては何気ない動きでも私には格別の美しさに見えます。

不意に、遠くから甲高い鳥の鳴き声が聞こえてきたので、音のする方に目をやると、昨日と同じ白い鳥が戯れているのが見えました。1日目の朝のように大群がやって来るのかなぁ。。と暫く目で追ってみましたが、そのまま東の空へと飛び去っていったので、彼らにも日々異なるルーティンがあるのだと納得。

再び視線を戻し、ガラスのような湖面をぼんやり眺めていると、3匹のカモが小さな奇跡を起こしました。
それは、景色の映り込む湖面にいくつもの波紋が重なり合ってできた自然美。
Daylesfordに住む人々にとっては日々繰り返されている日常の一コマかもしれないけれど、旅行者の私にとっては忘れられない瞬間で、こんな景色に何度も遭遇させてくれるLake Houseの環境に感動しっぱなしでした。

この日は何故か野鳥達が私たちのすぐ傍までやって来るのでこれを機に少し観察させてもらうと、くちばしの黄色い鳥もいれば、首元がまだら模様の鳥もいたりと、種類の多さにびっくり。

気付けば、私たちの周りには10匹以上の鳥が集まっていて、今日はこの辺りが彼らの食事場所なんだと気付き、邪魔にならない様そっとこの場を去りました。

Lake Houseをチェックアウトするまでまだ少し時間があったので、もう少し湖畔の散策を続けます。
風がほとんどない日の湖は大きな鏡のように周囲の景色を映し出すので、どこを切り取っても絵葉書の世界。

本当の景色と湖に映る景色の2倍の美しさがを味わえるだけでも贅沢なことなのに、それを更に優雅に見せてくれたのが湖面に跡を残しながら泳ぐカモの姿でした。

湖の真ん中に浮かぶカモから生み出される円状の波紋も、輪が広がるにつれて周囲の景色に負けないくらいの存在感を放ち、いつしか湖の主役はカモ達なんじゃないかと思うほど、私たちの視線を釘付けにしていました。

Lake Houseに2泊して出会った湖の表情は時間が経つごとに刻々と変化し、一つとして同じものはありませんでした。そして、もし違う季節に訪れたなら次はどんな新しい景色を見せてくれるのだろうと、更なる期待も湧いてきて、いつかまた再訪したいと思えるような素晴らしい場所でした。

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11時頃 Lake House を後にし、事前に手配しておいた専用車で次なる目的地 Yarra Valley(ヤラバレー)に向かう前に、Daylesfordでもう一箇所立ち寄りたい場所がありました。

それは『Sault』というレストランの敷地内にあるラベンダー畑。ホームページによると、レストランで食事をする人はそのラベンダー畑を自由に見学できると記載がありました。また、地元の食材や自家製野菜&ハーブを使用して作られる料理も人気のようで、メルボルンを象徴する地産地消をここでも味わえるなら一石二鳥だと思い、ラベンダー畑と昼食の両方を兼ねてSaultレストランに立ち寄ることにしたのです。

プラタナスの木が立ち並ぶ駐車場で車を降り木の間をくぐり抜けるとその先に広がるのは、Daylesfordを紹介するサイトで一目惚れした「ラベンダー畑、小さな教会、ポプラ並木、湖」が混在する絵葉書のような景色。

ラベンダーの最盛期は12~1月なので花の色は少し薄くなっていたものの、パステル調の紫と透き通る青空とのコントラストが美しく、自然が作り出す色彩の調和に心が和みます。そしてこの時、私たちの関心は目の前のラベンダー畑だけでなく、頭上に広がる雲にも惹きつけられ、大きな龍を思わせる独創的な雲が空を横断していました。

これまでもオーストラリアを旅していると、見たこともない雲に驚かされることが何度かあり、シドニー近郊のハンターバレーで見た雲は、青いキャンバスに白い絵具を無造作に塗り散らしたようなダイナミックな空で、「もしかするとオーストラリア上空には大陸特有の気流が存在し、私では知り得ないメカニズムで珍しい雲が作られるのか‥?」と想像してしまうくらい、規格外の空との遭遇確率が高いのです。

シドニー近郊ハンターバレーで見た雲
今回Daylesfordで見た雲

そんな珍しい雲を追いながらラベンダー畑の横の芝生を歩いていると、薄い水色のレストランが見え、そろそろ昼食の予約時間も近づいてきたので、レストランの正面玄関へと向かうことにしました。

レストランの名前が、ラベンダーで有名な南仏プロヴァンス地方にある「Sault(ソー)村」から名付けられたというだけあり、正面の外観や手前の庭からもフランスらしさが漂っています。

Saultレストランでの昼食は、金・土・日曜のみの営業。
オーストラリアの旅を計画すると毎回直面する「営業日の少なさ」と「店によって定休日がバラバラ」という問題に今回も頭を悩ませましたが、どうしてもこのレストランに行きたかったので、何とか営業日に合うように日程を調整しました。

レストランに入ると中は半円状の造りで、弧を描くガラス窓からは外の緑が見渡せるようになっています。どの席からも景色が眺められるよう全ての椅子が外向きにセッティングされている配慮が素晴らしく、気取り過ぎない温かな雰囲気がDaylsfordの町によく合っていました。

昼食の予約は11:30、まだ人も少なかったので窓際のテーブルに案内されました。この後、Yarra Valleyまで約2時間の車移動を控えていたので、お酒は頼まず、母が挑戦してみたいと言ったモクテルを注文。メニューは3コースと4コースの2種類あり、私たちは3コース(一人:AD115ドル)を選びました。

前菜は、「数種類のトマトと苺、ヤギのフレッシュチーズ、バジルの葉添え」。色鮮やかな見た目と、トマトの酸味と苺の甘味にフレッシュチーズが混ざり合い、バジルの香りがほのかにする爽やかな一品。

メインは、オーストラリアの夏~秋の時期によく目にするズッキーニのベジタリアンメニュー「ズッキーニの花の天ぷらとズッキーニのロースト」。添えられている葉には水滴が吹きかけられ、朝露を連想させる手の込んだ装飾も素敵でした。

デザートは、口の中がすっきりとしそうな「ヨーグルトソルベとメロンのグラニータ」と「ローズアイスクリーム、ルバーブの砂糖煮、ヘーゼルナッツ」を選びました。

どの料理も色鮮やかで美しく、必ず自家製の野菜やハーブ・食用花が添えられており、自信を持って一品一品を説明してくれるスタッフの方の目の輝きも印象的でした。

旅先でその街自慢の食に触れると、美しい景色を見たり人の温かさに触れるのと同じくらい心を豊かにしてくれるので、ここ数年は多少お金がかかっても素敵なレストランに訪れることが旅の楽しみの一つになっています。

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昼食後、Daylesfordを後にし、約170kmの距離を約2時間かけてワインの産地Yarra Valleyに向かいます。

メルボルン近郊には21ものワインの産地があり、中でも有名なのが、メルボルンから東に位置する『Yarra Valley(ヤラバレー)』と南に位置する『Mornington Peninsula(モーニントン半島)』。今回はワイナリー併設のホテルに滞在することが目的だったので、気に入ったホテルがある方の産地に訪れようと思っていました。

始めはお気に入りのホテルのあるモーニントン半島に気持ちが傾いていましたが、そのホテルには「金~日曜宿泊の場合、最低2泊から」という条件があり断念。更に調べていくと、モーニントン半島の方がブドウ収穫前の2~3月の時期は鳥に実を食べられないようブドウ畑にネットを掛けているワイナリーが多い印象で、できればネットの掛かっていないブドウ畑を見たいと思い、最終的にYarra Valleyにあるホテルを選びました。

滞在したのは、ワイナリー「Helen & Joey Estate」に併設したホテル『Re’em Yarra Valley』。ホテルの前に人工の湖が造られ、その先のなだらかな丘にパッチワークを広げたようにブドウ畑が広がっています。
この景色を見た時に母と交わした最初の会話は、DaylesfordとYarra Valleyのギャップの大きさでした。

Daylesfordの『Lake House』では森に囲まれひっそりとした湖畔の景色に心癒され、『Re’em Yarra Valley』では遮るものなく広がるブドウ畑・空・地平線の雄大さに心が一気に解き放たれる。メルボルン市街から1時間ちょっとでこんなにも異なる風土を味わえる ”メルボルンの秘めたる力” に驚かされた瞬間でした。

ホテルの前に造られた湖の周りに散策路があったので、少し歩いてみることに。

『Re’em Yarra Valley』は2023年12月オープンと比較的新しく、全16室のこじんまりとしたホテルで、柱に凹凸をつけた個性的なモダンデザインではあるものの、ネイビーブルーの色味が建物の主張を抑えてくれているので、周りの自然との馴染みが良い外観をしています。

ホテルの周りにはブドウ畑だけでなく牧草地も広がり、その先には山の姿も薄っすら見え、今回の旅の計画段階で候補に入れていた、巨木の中を走る森林ドライブやアカマツが立ち並ぶ森(Redwood Forest)の散策はあの辺りでできるのかと想像すると、この景色の中に存在するまだ見ぬ魅力にもっと触れたくなります。

緩やかな曲線を描く大地を歩いていると、道の先が波打って見えなくなるところもあり、この木の先にはどんな風景が広がっているのだろうと好奇心が湧いてきます。

できることならブドウ畑の更に奥へ足を延ばしパッチワークの中に身を置いてみたかったのですが、この日は30℃を超える真夏日で、影のない湖畔を歩いていると一気に体力を消耗してしまったので、約30分ほどの散策を終え部屋に戻ることにしました。

とは言え、部屋からも美しいブドウ畑の景色を眺められるのが『Re’em Yarra Valley』最大の魅力。
ベッドルームやバスルームはシンプルモダンなデザインで統一されているので、部屋に居ても自然と外の景色に目が向くようになっており、外のベランダにはふかふかのソファとテーブルを設置、上の階のベランダが屋根代わりとなり日影にもなるので、Yarra Valleyの景色を眺めるには最高のロケーションなのです。

ソファに座り穏やか過ぎるブドウ畑の景色を眺めていると、地平線から湧き上がるように雲が現れ、午前中に見たラベンダー畑の空に負けないくらい独創的な雲を目の当たりにしました。
雲一つない青空よりも、雲のある青空の方がダイナミックで雄大に感じるオーストラリア・マジック。

この奇跡のような時間は更に続くこととなり、ホテル併設のワイナリーが閉まると噴水も止まり、目の前の湖が鏡の様に空を映し始めました。1mmも揺れない湖面を見ていると、景色を映し込むだけでなく、周囲の静けさまで表現しているようで、”なぜこの場所に敢えて湖を造ったんだろう…” という答えが一瞬にして理解できた気がしました。

日が暮れ始めると空はほんのり赤く染まり、湖も同じ空色に染まっていくトワイライトタイム。
もしこのホテルに泊まらずワイナリーだけ訪れていたなら、噴水の止まった湖が鏡のようになることも、空を映し込んだ湖がYarra Valleyの大地をより一層美しく見せることも知らずに旅を終えていたことになり、Yarra Valleyに1泊する選択をした価値は想像以上に大きかったことを身をもって実感しました。

そして、この「Yarra Valleyに滞在する価値」は、翌朝、更に感じることになるのです。

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