2024年3月に6日間旅したオーストラリア、シドニー。1都市だけの滞在でしたが、多くの魅力を感じ、想像以上に刺激を受ける旅になりました。旅行記を通してシドニーの奥深い魅力を感じていただけると嬉しいです。
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【旅の行程】
1日目:朝シドニー着、街の散策 <シドニー泊>
2日目:シドニー→ブルーマウンテンズへ <ブルーマウンテンズ泊>
3日目:ブルーマウンテンズ観光 <ブルーマウンテンズ泊> ☚今はココ
4日目:ブルーマウンテンズ→ハンターバレーへ <ハンターバレー泊>
5日目:ハンターハレー→シドニーへ <シドニー泊>
6日目:街の散策 <シドニー泊>
7日目:午後の便で日本へ
ブルーマウンテンズ国立公園の代表的な観光スポットには、中心の町カトゥーンバからアクセスの良い、『エコーポイント』(=スリーシスターズという3つの奇岩群を間近で眺められる展望台)や、『シーニック・ワールド』(=トロッコ列車・ケーブルカー・ロープウェイに乗って様々な角度からブルーマウンテンズを見ることができるアトラクション)などがあります。
それらの観光スポットも魅力的ではあったのですが、私がイメージするブルーマウンテンズの観光は、
● 森林の中を歩いたり、滝を眺めたりすること
● できるだけ自分の足で大自然を感じること
だったので、今回は国立公園内にいくつもあるビューポイントやトレッキングコースの中からイメージに近い場所を探すことにしました。
参考にしたのはオーストラリア在住の方の英語ブログで、トレッキングの所要時間や難易度・ビューポイントからの眺めなどが細かく記されていたので、興味のある場所をいくつかピックアップし、その中からGoogle Mapで位置関係や移動時間を見比べて、1日で回れる観光ルートを考え、、、
最終的に、下記4つの場所にあるビューポイント・トレッキングコースを訪れることにしました。
効率的に回るため、ブルーマウンテンズ観光用に1日貸し切りの専用車も手配していました。
ブラックヒース(Blackheath)
私が「ブラックヒース」に興味を持ったのは、”渓谷、崖、岩、滝の全てが集結し、ブルーマウンテンズの中で最もダイナミックな地形を感じられる場所” と書かれたブログがきっかけでした。アメリカのグランドキャニオンを感じさせる渓谷美が広がり、よく目にするブルーマウンテンズの広大な景色とは一味違う魅力があったので、この場所に行ってみたいと思うようになりました。
まず始めに訪れたのは『Govetts Leap Lookout』というビューポイントです。
ホテルを9時に出発し、約1時間ほどで到着。平日の午前ということもあり人の姿はほとんどなく、周辺には澄み切った空気と静けさだけが広がっていました。
駐車場から遊歩道を少し歩くとビューポイントがあり、その先に広がるのは、大パノラマの青空と一直線の山の尾根。遠目からは地形の全貌が全く把握できず、本当にブログに書かれていたような景色は現れるのかなぁ。。と柵に近づいてみると、
そこに広がるのは、目を見張るほどの入り組んだ地形!
蛇行した渓谷は遠く先まで続き、山の斜面は繊細かつダイナミックに削り取られ、うっそうと茂る木々も切り揃えたかのように緩やかな曲線を描き、これら全てが自然によって作り出されたものだとは思えないほど均整の取れた造形美でした。
ほぼ緑一色の景色なのに遠くが青く霞んで見えるのは、山を覆い尽くすユーカリの木に含まれる油分が揮発し、太陽の光に反射して青く見えるからだそうで、それが”ブルーマウンテンズ”の名の由来にもなっています。
少し移動して見る角度を変えると岩が迫ってくる荒々しい姿へと変化し、同じ景色でも受ける印象が異なる不思議な風景。更に先に進むと、岩肌むき出しの崖が現れ、一筋の滝が可憐に滴り落ちる姿が見えました。この滝の名は「Bridal Veil Waterfalls」で、花嫁が頭に着けるウェディングベールに似ていることからそう呼ばれているようです。
見る角度を変えると様々な表情を見せてくれる、そんな魅力が『Govetts Leap Lookout』にはありました。
そんなブラックヒースで、もう一箇所訪れた場所が、Govettes Leapから車で10分程の距離にある『Evans lookout』。ここにも人の姿はほとんどなく、静けさが際立つビューポイントでした。
柵からの眺めは、先に訪れたGovetts Leap Lookoutほどの迫りくる感じはなく、Grose Valleyが緩やかに蛇行し、山の斜面もなだらかに広がるので、優しい印象の景色に見えました。
そしてブラックヒースでは、ダイナミックな姿を上から眺めるだけでなく、ビューポイントを拠点に大渓谷の中を歩くトレッキングコースが幾つかあり、巨石や渓谷に囲まれながら歩くこともできるので、ブルーマウンテンズを訪れるのが初めてでなければ、この青々とした木々の内側の世界も覗いてみたかったです。
とは言え、ブラックヒースで訪れたビューポイントからは、エコーポイントやシーニックワールドから見るブルーマウンテンズとは雰囲気の異なる絶景が眺められるので、時間がある方は是非訪れてみて下さい。
カトゥーンバ(Katoomba)
「カトゥーンバ(Katoomba)」は、ブルーマウンテンズ観光の拠点となる最も有名な町で、私がこの場所を選んだ理由は『Katoomba Falls Round Walk』というカトゥーンバの滝を見ながら歩けるトレッキングコースがあったからです。ブルーマウンテンズにある滝を色々探している中で、一直線に水が落ちるだけでなく何段もの岩を介して流れていくカトゥーンバの滝があまりにも美しく、この滝を近くで見てみたいと思ったのです。
トレッキングコースは、シーニックワールドがある場所から始まります。
木々の間に作られた道を下るように歩き進むと、徐々に原生林の間からそそり立つ岩肌が見えてきて、上から眺めているだけではわからないブルーマウンテンズの本質に触れているような気分になります。
とは言え、ずっと森林の中を歩き続けるわけではなく、ルート途中に『Vaniman’s Lookout』や『Juliet’s Balcony』というビューポイントがあるので、遠目にスリーシスターズ(3つの奇岩群)や、テーブルのように平らな山々など、ブルーマウンテンズの広大な景色を眺めることもできます。
また視線を内側に向ければ、崖の切れ間から流れ落ちるカトゥーンバの滝も見え、始めは高い目線から横向きの滝を見下ろすように眺めていましたが、
トレッキングコースを下っていくにつれて、目線が滝と同じ位置になり、真正面からその姿を捉えられるようになりました。ここ数日降水量が少なかったせいか水量は多くありませんでしたが、階段状の岩に流れ落ちる姿は絹糸のようで、”雄大・大迫力” だけでは語れないブルーマウンテンズの繊細さを感じました。
この日は更に下へと下るコースが侵入禁止になっていた為、これ以上滝に近づくことはできなかったのですが、途中に現れる岩がむき出しの道や、
岩盤に滴る水、崖に張り付くように造られた階段などに出くわすと、自然本来の姿やスケールの大きさを肌で感じ取ることができ、冒険をしているような気分が味わえました。
このトレッキングにかかった時間は約1時間半。途中、自然にできた岩の椅子に腰をかけ、ブルーマウンテンズの大自然に囲まれながら、ホテルにお願いして用意してもらったサンドイッチやクッキーでランチタイムをとり、大満足のトレッキングになりました。
ウエントワース・フォール(Wentworth Falls)
カトゥーンバの町を出発したのが午後12:30頃、次に向かったのは「ウエントワース・フォール(Wentworth Falls)」です。ここでの目的は、カトゥーンバの滝のような繊細な滝の姿ではなく、これぞオーストラリアの大自然と感じさせてくれるダイナミックな滝の姿を様々な方向から眺めることでした。
まずは駐車場のあるWentworth Falls Picnic Areaから出発し、すぐ近くにあるビューポイント『Jamison Lookout』から広大に広がるJamison Valleyを見渡します。ここが今回のトレッキングコースの出発点です。
Jamison Lookoutからトレッキングコースを進んでいくと、途中分かれ道があり、『Princess Rock Lookout』と書かれた道を進むこと約15分、木々の切れ間から見晴台が現れ、そこから景色を眺めてみると、、、
ー なんて素晴らしい絶景!
弧を描く崖の真ん中に、岩の拳が突き出たような力強い滝の姿がありました。
滝から右の方へ視線を移すと、大きく張り出す一枚岩のような雄大な大地が広がり、その先の景色に吸い込まれてしまいそうです。
再び滝に視線を戻し、ウエントワースの滝をじっくり眺めてみると、そのフォルムは本当に独特かつダイナミックで、幾重にも重なる岩の段差、幾通りもある水の通り道、岩から落ちた後の水しぶきの行方など、どれもが想像の域を超える美しさでした。
今から、この滝に少しずつ近づき、異なる視線で滝の姿を見に行きます。
次に向かったのは『Fletchers Lookout』というビューポイントで、比較的幅の広い道を歩いていくと、岩と岩の間に見晴台が現れ、岩の窓から景色を覗き込むようにして、Jamison Valleyが見渡せます。
この『Fletchers Lookout』には少し離れた所にもう一つ見晴台があり、そこからは、ウエントワース滝の上部分を間近で眺めることができます。
一見すると、木々の間に岩の塊が横たわっているように見えるのですが、よく見ると何本もの水の線が岩の上を流れ落ち、幾重にも重なる岩の様子もはっきりと確認できました。
更に目を凝らして滝の上部を見ると、滝を横断するように造られた遊歩道があります。次はその遊歩道を渡り、反対側から滝を眺められるビューポイントを目指します。
トレッキングコースを下っていくと、徐々に水の流れる音が強くなり、道沿いに小川が流れていました。更に先に進むと、先ほどFletchers Lookoutから見ていた遊歩道が現れ、そこには、ウエントワースの滝に水が流れ込む手前の小さな滝『Queen’ Cascade』の姿もありました。
そんな遊歩道を渡り切ると、トレッキングコース周辺の景色が変わり始め、むき出しの岩が多くなり、アップダウンも大きくなっていきます。柵がなければ崖の下に落ちてしまいそうな道も出てきて、迫力満載です。
そして次の目的地である『Rocket Point Lookout』に辿り着きました。
このビューポイントはFletchers Lookoutとは反対側に位置し標高も低いので、ウエントワース滝の中間部分、水が流れ落ちる姿を真横から眺めることができます。
水量がそれ程多くないからなのか、滝の形状まではっきりと見え、地層のように細かく刻まれた階段状の岩、その岩を滴り落ちる水の線も一本一本鮮明に見え、唯一無二の独特の美しさを放っていました。
そして更に一段一段が大きな階段状の道や急勾配の道を繰り返し下っていくと、滝を真上に見下ろせるポイントまで辿り着けるのですが、、、私はもうひと踏ん張りができず、ここで断念。
次に訪れる別の場所で、ブルーマウンテンズを見納めることにしました。
リンカーンズ・ロック(Lincolin’s Rock)
ウエントワースを後にしたのは15時頃、最後に向かったのはSNSでも人気の『リンカーンズ・ロック(別名:キングス・テーブルランド)』という場所です。
駐車場の近くに「LINCOLN’S ROCK」という標識があり、ここから数分歩くと、平らな白い岩場が現れます。
岩の先は断崖絶壁になっており、そこからはJamison Valleyの雄大な景色が見渡せるのですが、一切柵が造られていないので、人工的な境界線を挟むことなく絶景が眺められる ”自然が作り出した展望台” として注目を浴びています。
特に岩が張り出した一部分が人気の写真スポットになっており、断崖絶壁に座る自分と広大に広がるJamison Valleyを一枚に収めた大迫力の写真が撮れるので、私が訪れた時も20人近くの人がそのスポットに列を作っていました。
私は写真目的ではなく、ブルーマウンテンズの雄大な風景を見収めることが目的だったので、列には並ばず人があまりいない岩場で、この日最後の風景を楽しみました。
今回は上記4つのポイントを訪れましたが、どの場所も表情の異なる景色が楽しめ、ブルーマウンテンズの奥深さを実感しました。そして同時に、1日の観光ではブルーマウンテンズの魅力を語りつくせないと感じたのも事実で、歩いてみたいトレッキングコースはまだまだあり、機会があればもう一度訪れたいとも思えるほど、ブルーマウンテンズは魅力の尽きない場所でした。
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ホテルに戻って来たのは16:30頃。
全身の疲れをほぐす為、バスタブにお湯をため、夕食前に体を温めました。一息ついた後、部屋のベランダに出てみると、地平線近くが薄っすらオレンジ色に染まり、サンセットが近づいているのがわかりました。
19時になったので、そろそろ夕食を食べにホテルのメイン棟にある「amaraレストラン」へ。
このホテルの宿泊プランは、滞在中の3食事&飲み物が含まれたオールインクルーシブが基本で、夕食は5コースディナーがいただけます。
1日目のディナーではオーストラリア産のワインを注文しましたが、2日目はブルーマウンテンズ観光による疲労感で体が甘い飲み物を欲していたので、カクテルをお願いしました。
滞在した3月の日没時間は19時20分過ぎ、席に着いた時はまだ外は明るかったのですが、時間が経つにつれて空が色づき始めたので、食事を待っている間、外のテラスに出てみることにしました。昼間は周囲の緑が眩しいこのテラスも、今は紫色に染まるノスタルジックな雰囲気。
暫く空を眺めていると、雲の色がどんどんと濃くなり、燃えるようなピンクに染まっていきました。
朝は七色に輝く空から始まり、日中は緑のグラデーションに囲まれ、夕暮れ時には空が赤く染まり、夜には南十字星を含む満点の星空を眺める、、、今回のブルーマウンテンズでは、本当に様々な自然の色彩・空模様に魅せられた滞在でした。
席に戻るとコース料理が始まりました。
メニューには英語表記の食材だけが書かれているので、どんな料理が出てくるのか想像するのも楽しいです。
この日のメニューは、
*Daikon – Celeriac Remoulade(根セロリ入りのレムラードソース、大根挟み)
*Carrot – Ricotta – Tomato(人参とトマトのリコッタチーズ添え)
*Market Fish – Dill – Citrus(本日の鮮魚、ディルとシトラスのソース)
*Lamb – Asparagus – Beetroot(仔羊のグリル、アスパラガスとビート添え)
*Chocolate – Lemon – Bayleaf(チョコレートとレモンソルベ)
一皿運ばれてくる度に、”美しい盛り付けに笑みがこぼれ、繊細な味付けに舌がとろける” の連続で、大根という名をそのままメニューにしたり、仔羊にかけてくれたソースが醤油風味だったりと、日本の食材や味付けを感じられることにも驚き、一品ごとの量も適量なので、最後までコース料理を味わい楽しむことができました。
ブログには2日目の夕食のみ紹介していますが、1日目も想像力を掻き立てられる素晴らしい食事でした。『Spicers Sangoma Retreat』は、ブルーマウンテンズの大自然に没入できるだけでなく、オーストラリアの繊細な食事と優雅な時間が味わえる、最高の隠れ家ホテルでした。
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