
昨年2024年に訪れたシドニー旅行を通して、私のオーストラリアに対する価値観が180度変わり、更にこの国を知りたいと思い計画を始めた2025年のメルボルン旅行。今回の旅の同行者は夫ではなく、私の母。親子でもあり友人でもある母との女子旅なので、アクティブな体験ではなく、景色や食事に癒される休日をイメージして旅を計画しました。
そして、できることなら、母にもオーストラリアの知られざる魅力を味わってもらいたいと思い、”メルボルンに来たならここ!” という王道の場所ではなく、母と私のやりたいことを詰め込んだオリジナルプランにしました。このブログを通して、少し違う角度から見たメルボルンを感じていただけたら嬉しいです。
今回は、旅行記を始める前に、訪れた場所、時期、旅のダイジェストについて書き綴ります。
【計画】オーストラリアのどの街へ行く?
私が旅を計画する上で大切にしていることが、同行者の笑顔。同行者が何を見て体験すれば笑顔になるだろうと想像しながら行程を考えると、多くの選択肢の中から今回の旅に相応しいものが明確になり、新たに探すべきことも具体化し、それらを形にして一つの旅に仕上げることが私にとって至福の時間でもあります。そして、私は行き当たりばったりの旅ではなく、綿密に計画する旅が好きなんです。
母の好きなものと要望を書き出してみると、、、
*アンティークやカントリー調のインテリアが好き
*美しい景色の中でゆったり過ごしたい
*お洒落なカフェやお店を巡る街歩きが好き
*心から美味しいと思える食事をしたい
これらを書き出している途中からすでに心は「メルボルン」に決まっていました。
Melbourne(メルボルン)とは…
➢オーストラリアのカフェ文化発祥の地で、街中にたくさんのカフェがある
➢地産地消の精神が特に強く、この地で作られたものをその場で味わえるレストランが豊富
➢メルボルンのあるビクトリア州は19世紀に金鉱が発見されたことで発展を遂げたので、ゴールドラッシュ時代の古き良き街並みが残っている
では、5泊8日間の日程でメルボルンとその郊外のどこに訪れるか。。。
まずは「美しい景色の中でゆったりと過ごしたい」という母の想いを叶えるべく、以前から気になっていたメルボルン郊外にあるホテルが頭に浮かびました。それは、メルボルンから車で約1時間半のDaylesford(デイルスフォード)にある『Lake House』。

このホテルはDaylesford湖畔に佇み、湖は大きな一枚鏡のような形ではなく、小さな湖が点在し周りに木々や季節ごとの植物が茂る隠れ家のような場所。これは、きっと母が抱くオーストラリアのイメージとは異なる風景で、ひっそりとした湖畔でのひとときに心癒されるのではと思い、このホテルに2泊することにしました。

5泊のうち2泊をのどかな郊外で過ごすので、次はオーストラリアらしい雄大な自然が感じられる場所にしようとまず考えたのが、風光明媚な海岸線と十二使徒の奇岩群で有名なグレートオーシャンロード。
「のどかさ→雄大さ」へと移り変わる景色は旅のアクセントになって良いのですが、問題は移動時間。メルボルンから十二使徒までは車で片道約5時間、日帰りだと往復10時間の車旅となり体力的に厳しいし、途中の街で1泊したとしても、ほぼ丸2日を使ってしまうのは少し勿体ない。。。
それならば、メルボルンから車で約1時間で行けるワインの生産地Yalla Valley(ヤラバレー)で、雄大に広がる丘陵地とブドウ畑を眺め、日帰りではなくワイナリー併設のホテルにあえて1泊し、刻々と変わる空の色とブドウ畑との景色をゆっくり楽しむ方が時間を有意義に使えると思いました。

残りの2泊はメルボルンの街に滞在、トラムに乗りながらカフェ巡りをしたり、ストリートアートや歴史的建造物、緑豊かな公園を散策しながら、オーストラリア第2の都市を味わうことにしよう。。
そして最終的に、今回の旅は「のどかな田舎の風景 → 雄大な丘陵地&ブドウ畑 → 歴史とアートが混在する大都市」という流れに決定しました。

【計画】メルボルンに、いつ訪れる?
2025年1月~5月の間のどこかの時期でメルボルンに行きたいという思いがありました。
具体的な日にちを決めるに辺り、私が重要視したことは、「大きな祝日に当たらない時期」と「大きなイベントが開催されていない時期」。世界的な大型連休に訪れて街やホテルが混雑することは避けたいし、イベントの開催に伴う交通規制などで観光に支障をきたすことも避けたい。それぞれを調べ書き出してみると、、、
【大型連休】
*中国の春節(旧正月):1/28~2/4
*イースター:4/20を挟む前後の週(4/14~4/27)
*ビクトリア州のスクールホリデー:3/28~4/14
【メルボルンの主要イベント】
*全豪オープンテニス:1/12~26
*F1オーストラリアGP:3/16(計画を始めた2024年4月時点では3月中としかわからず)
上記に当てはまらない時期は、2月下旬か5月。メルボルンの5月は秋にあたり、木々の紅葉やぶどう畑の黄葉が美しい時期ではあるものの、5月の日没は17時過ぎで早くに暗くなるので観光時間が短くなる。それに比べ2月の日没は20時過ぎでゆっくりと観光ができるので、緑濃い夏の時期「2025年2/18(火)~25(火) 5泊8日間」にメルボルンを満喫することに決めました。

今回の旅のダイジェスト
成田発のシンガポール航空にて、途中シンガポールを経由し、メルボルンに着いたのは朝の5:40。早朝着なので、1日目から丸1日観光ができる理想的な行程。シンガポール→メルボルンは深夜飛行で、思いのほか眠ることができたので、私も母も移動の疲れを感じることなく旅を始めることができました。
メルボルンの空港を後にし、事前に手配しておいた専用車でまず始めに向かったのは、『Lake House』のある「Daylesford」という町。
この町について調べている時に、ふと目に留まったのが1軒のアンティーク調のカフェでした。1950年代に雑貨屋だったお店の雰囲気を残し、極上のコーヒーと食事を求めて地元の人が足繁く通うこのカフェには、母の好む要素が沢山詰まっていたので、ここでの朝食を旅の始まりにしたかったのです。

カフェに1歩足を踏み入れると、アンティークな雰囲気は思い描いていた通りで、母も目を輝かせ、見るもの全てに魅了される私たち。カフェ文化発祥の地で初めて味わうラテ&カプチーノ、新鮮野菜に繊細な味付けの食事、そして地元の人たちの談笑、全てが私たちを温かく出迎えてくれているようでした。

朝食後、ホテルのチェックイン時間(14時)まで半日近くあったので、車で更に40分程走り訪れた街が「Ballarat(バララット)」。この街にはゴールドラッシュ時代の建物が数多く残っており、当時の建築方法や色使いを現存する建物で味わうことのできる歴史的な街並みが魅力なのですが、

同時に現代アートも様々な所に散りばめられていて、つい見逃してしまいそうな細い路地にカラフルな傘がぶら下げられていたり、

壁一面に色彩豊かなストリートアートが描かれていたりと、古き良き時代の建物と最先端のアートとの両方を味わえる面白さがありました。

そして、いよいよ、この旅で一番楽しみにしていた場所でもあり、同時に、どんな雰囲気なのか未だつかめず、ベールに包まれたような場所でもあった『Lake House』に到着しました。

お部屋は、ゆったりと過ごせるように、ベッドルームとリビングルームに分かれたスイート仕様のWaterfront Suiteを。母は、家のような造りのお部屋に滞在するとは想像もしていなかったようで、家具や置物、センスの良いインテリア、大きな一枚ガラスから見える湖の景色全てに終始感動の連続。
情報が少なく多少の不安はありましたが、自分の感性を信じこのホテルを選んで良かったと心から思いました。

私が訪れた時は、『Lake House』に宿泊するのに、最低2泊からという条件が設けられていました。
小さな町のホテルに2泊する価値、、、それは滞在を進めていくうちに実感することとなり、ある日の早朝、部屋のベランダから静寂に包まれる湖に出てみると、朝焼けで空と湖が赤く染まり、日中水面でしか見かけることのなかったカルガモが何匹も岸に集まって、無心に草をつつく姿がありました。

別の日の朝は、外から野鳥の大きな鳴き声がするなぁと湖に出てみると、白い群れが変幻自在に形を変え、一つの大群が低空飛行したかと思えば、上空で二つに分かれ、また一つの大きな木に集まって低空飛行を繰り返す、というスペクタクルショーが繰り広げられていました。

太陽が更に昇ると、水面は周囲の木々を鏡のように映し出し、カルガモたちはその水面を滑るように泳いでみたり、私たちに臆することなく岸に上がって日光浴を楽しんだり。。
この湖は時間帯やその日の天候によって見せる表情がころころと変わり、野鳥たちの行動も日々異なるので、2日間滞在しただけでも、何十日分もの湖の景色を見せられているようでした。1泊だけの滞在だと、こんなにも変化する湖の表情には気付けなかったと思います。

私がこの『Lake House』でもう一つ楽しみにしていたことが、自分達の農場で育てたものを使って調理してくれる料理。週に3回、宿泊者だけが参加できる農場ツアーが開催されているので、ホテル自慢の夕食を味わう前に、どうしてもその農場を見ておきたいと思いました。

広大な農場では、オリーブの木やブドウの木が何本も植えられており、畑には旬の野菜が育ち、牧草地を含む敷地内には、牛・にわとり・ホロホロ鳥などの家畜が歩き回るという、観光地化され過ぎていない農場での日常が垣間見れ、『Lake House』を深く知る貴重な体験ができました。
それが故に、目の前に運ばれてくるディナーの一品一品を見る度に農場の風景が頭に浮かび、あの時の野菜だと認識しながら食べることで、より一層野菜本来の味わい深さや色彩の美しさが感じ取れました。

Daylesfordは小さな町ですが、魅力的な場所はアンティーク調のカフェや『Lake House』だけに留まらず、この町を奥深く調べてみると素敵な場所はいくつもあり、その中でも私が一番心惹かれたのが、ラベンダー畑の先に小さな教会がある絵葉書のような場所。

ここは邸宅風レストランの敷地内にあり、ラベンダー畑だけでなく、別の場所では野菜やハーブ・食用の花が育てられており、それらを使った料理もいただけるのです。運ばれてくる料理に添えられるスタッフの方の説明にも自家製という愛情とプライドが感じられ、お腹だけでなく心まで満たされたランチ時間になりました。

Daylesfordで過ごした日々は、刻々と変化する湖の景色から始まり、野生の鳥たちの日常を垣間見、のどかな景色に癒され、素晴らしい食文化を体験するという、心の深い部分に沁みわたるとても穏やかな時間でした。
次に目指す雄大な景色が広がるYalla Valleyではどんな日々が待っているのか。。。
Daylesfordを後にし、まず向かったのはYalla Valleyで1泊するワイナリー併設のホテル。
ホテルの部屋から見たYalla Valley最初の景色は、絨毯のように敷き詰められたブドウ畑と壮大なスケールの空。『Lake House』で感じた人里離れた奥深い雰囲気とは対照的に、遮るものなく広がる景色は圧巻で、心が一気に開放されていくようでした。

翌朝、日の出前に部屋のベランダに出てみると、噴水が止められた鏡のような湖にピンクに染まる空が映り込み、Yalla Valleyでブドウ畑以外に魅せられる景色があるんだと、新たな発見をしました。

暫くすると、正面の丘から朝日が昇り、黄金色の光がブドウ畑を優しく包み込みました。
部屋からブドウ畑を見る為にこのホテルを選びましたが、まさかこんなにも色とりどりの景色に出会えるとは想像もしておらず、Yalla Valleyに1泊した価値を噛みしめました。

この日は、2箇所のワイナリー巡りへ。私も母もワイン通ではないので、個性の異なるワイナリーを訪れて美しい景色と優雅な雰囲気を楽しむことがメインの目的でした。
1軒目に訪れたのは、ワイナリーの素朴さとブドウ畑の美しさに惹かれた『Soumah Wines』。

一面ガラス張りの建物と大きなユーカリの木がアクセントになるワイナリーの正面には、なだらかな丘と真っ直ぐに伸びるブドウ畑が広がり、外のテーブル席でその景色を眺めながら、ロゼと白ワインで一息。

2軒目のワイナリーは、シャンパンで有名なフランスのモエ・エ・シャンドン社がオーストラリアに創設した『Chandon Australia』へ。ここでは、大きなガラス窓からブドウ畑が見渡せる洗練された雰囲気の「Lounge Bar」でランチを食べることが目的でした。

選んだメニューは、ここでしか味わえない ”シャンドン・オレンジ” の愛称で知られるオレンジ風味のスパークリングワイン「Chandon Garden Spritz」と母はオレンジのモクテル、そして生ハム&バケットの盛り合わせ。
ワインの試飲とは少し違う、私たち流のワイナリー巡りを楽しみました。

そして、最後に訪れたのが、オーストラリア第2の都市メルボルンの街。
主要交通であるトラムに無料で乗れる街の中心エリアには、カフェやレーンウェイ(路地)、ストリートアート、世界で一番美しい図書館などの人気の観光スポットが集まっていますが、私たちは、無料トラムZONEを過ぎた高層ビル群のないエリアがお気に入りでした。

クイーンヴィクトリアマーケットから更に北に広がるエリアは街並みが落ち着いていて、大都市とは思えないほど閑静で、古き良き建物とストリートアートとの調和が素敵でした。古い街並みに合ったカフェで食べたティラミスフレンチトーストは、見た目のお洒落さだけでなく、パンはふわふわ、クリームは甘さ控えめのティラミス風味が絶妙で、メルボルンのカフェ文化のレベルの高さを実感しました。

街の東側にあるフィッツロイ地区は、若者たちの自由さがより一層表現された場所で、そのエネルギッシュさに圧倒されることもありましたが、古い建物にストリートアートを混在させた街並みはとても個性的で、現代アートの中を歩いているようでした。

もちろん、中心エリアにもストリートアートがびっしりと描かれた路地が沢山あり、世界から注目を浴びるこの場所に自分の個性を描き残すアーティストたちの魂の叫びのようなものがどの絵からも伝わってきて、ほんの数十mの路地なのにその迫力は想像以上でした。

ヤラ川を渡り、王立植物園などがある南側のエリアに足を運ぶと、街並みは一変、道路脇には見慣れないフォルムの緑の木々が立ち並び、その幹には当時ヴィクトリア国立美術館で展示されていた草間彌生さんの作品をモチーフにしたドット柄が巻かれていて、自然とアートとが一体化する不思議な景色が広がっていました。

そのまま緑溢れる公園の中を歩き、戦争慰霊館からメルボルンの街並みを眺めると、真正面のビルには人の顔が描かれていて、メルボルン全体がアート作品なんだと実感しました。

そして、メルボルンの街歩きの最後に母が残した言葉がとても印象的で。。。
「行き交う人は誰も携帯を見ずに楽しそうに歩いている」
始めは薄暗い路地や刺激的なストリートアートに圧倒され過ぎて心が疲れることもありましたが、街歩きを続けていくうちに、エリアごとに雰囲気の異なるアート作品の中を歩いているような感覚になり、自分達に合った場所を見つけ出すのが楽しくなっていきました。きっと、メルボルンの人達もこの自由な街の中で自分に合った場所を見つけ、刻々と変化し続ける街を楽しんでいる…、だから街歩きに携帯は必要ないのかなと。。。
最後に、ホテルのテラスから見たお気に入りのメルボルンの街並みを。

朝の空、昼の青空、夕方の淡い空、そして夜景、全てに映えるビル群は本当に圧巻で、この景色を見たくて、外にテラスのあるこのホテルを選びました。
ホテルに到着して、真っ先にこのビル群を見た時の印象と、数日街歩きをした後に見たビル群の印象は全く異なり、私と母とで見つけ出したメルボルンの魅力は忘れられない思い出になりました。
そして、今回のメルボルン旅を終えて真っ先に感じたことは、”昨年旅したシドニーとは全く印象の異なる街だ” ということ。やっぱりオーストラリアは知れば知るほど奥深い国です。
これから数回に分けて旅行記を書いていこうと思います。